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2024年4月 所変われば品変わる

 新年度が始まりました。新入生の皆さんは、そろそろ学校に慣れてきたことと思います。周りのことに興味を持つ余裕も出てきたでしょうか?ところで皆さんは自然のことに関心がありますか?生徒の皆さんの多くは秩父地域に住んでいるので、自然豊かなことが当たり前で、素晴らしいことに気がついていないかもしれません。

 さて、「所変われば品変わる」という言葉を聞いたことがあると思います。精選版日本国語大辞典を引いてみると、「土地が違えば、それに従って風俗や・習慣・言語などが違う」と書いてありました。植物も「所変われば品変わる」のです。

 昨年度4月の校長ブログで、小鹿野町との縁について書きましたが、小鹿野町の二子山は、私にとって忘れることができない山です。二子山の山頂付近は、石灰岩が露出していて、ロッククライミングでも親しまれています。石灰岩地には同じ秩父地域でも例えば両神山のような珪質の岩石でできている山とは違う植物が生育する傾向があります。例えば石灰岩地には石灰岩地特有の植物が生育するということです。同じようなことが、蛇紋岩地の山でもみられます。まさに「所変われば品変わる」です。石灰岩地に生育する種類の場合、石灰岩地の土壌に含まれるカルシウム分などが生育に不可欠な植物であるという可能性と、高濃度のカルシウムイオンに耐性があるという可能性が考えられます。石灰岩地にだけ生育する植物でも、栽培してみると、石灰岩を必要としないものもあるということですから、種間の競争を避けて過酷な石灰岩地を生育の場としているものが多いのかもしれません。また、石灰岩地でみられる現象としては、通常は、石灰岩地に生育が限られない種類が、分布の限界に近いところでは、石灰岩地に多く生育するというようなことが知られています。蛇紋岩地でも同じようなことがあります。そのような植物の例がヤマブキです。

 ヤマブキ

ヤマブキ

 

ヤマブキは、斜面などに生育する高さ1mほどの落葉低木です。秩父地域では、4月ごろ黄色で5枚の花弁を持つ直径3cm程度の花を咲かせます。ヤマブキの花は鮮やかな黄色で、その色を山吹色ということもあります。また、その色から小判や大判のことを山吹色と言ったりもします。さて、このヤマブキは、朝鮮半島や中国にも分布していますが、国内では北海道、本州、四国、九州に分布しています。南限に近い四国の高知県や九州の熊本県では、ヤマブキが石灰岩地に生育する傾向があるというような記述が植物誌などに見られます。また、秋になると赤い実を付けるナンテンも熊本県などでは、石灰岩地に生育することが多いとされています。ナンテンは、「難を転ずる」として縁起物の植物です。赤飯の上に葉の一部が乗せてあることもあるので、みたことがあるかもしれません。

 

校長室の前の植え込みに生えたナンテン

 

 このように植物も「所変われば品変わる」のです。本校では、6月に修学旅行がありますが、沖縄県に行くとまた、植物が違います。日本は、北から南まで国土が広がり、そこに生育する植物も大きく変わります。修学旅行では、沖縄の景観にも注目してもらいたいと思います。また、埼玉県は海なし県ですが、一番高い三宝山から平地までの標高差は2,500m近くあります。そして、石灰岩地など地質も多様です。まもなくゴールデンウィークですが、旅に出るときは、その地の自然にも注目すると、旅行の楽しみが広がると思います。