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2024年3月 サクラではない「サクラ」 


 3月下旬になり、ソメイヨシノはまだですが、サクラのなかまの開花が始まってきました。サクラは、バラ科のサクラ属の植物の総称ですが、和名にサクラが入っているけどサクラのなかまではない植物も多く知られています。例えば、埼玉県の花「県花」は、サクラソウという植物です。

 

田島ヶ原のサクラソウ

田島ヶ原のサクラソウ

 

県内ではさいたま市桜区の田島ヶ原に生育地があり、国の特別天然記念物として保護されています。サクラソウは、江戸時代には、花見の対象にもされていたそうです。本来は川の氾濫原で土砂が堆積した湿地などに生育していました。現在は、治水工事が進み、氾濫が起こらなくなり、ヨシの刈取をしたり、火入れをしたりするなど人の手が入ったりするような場所で、遷移が進みにくい場所に保護されて生育しているような植物です。田島ヶ原では1月に火入れを行い、地表に光が届くようになり、遷移も進まないようにしているそうです。田島ヶ原には、そのほか、先月の校長blogに書いた「春植物」であるジロボウエンゴサクやアマナなども生育しています。

 

ジロボウエンゴサク

ジロボウエンゴサク

 

アマナ

アマナ


 さて、実は小鹿野の地にも今の時期に花が咲くサクラではない「サクラ」が生育しています。フサザクラです。

 

開花が近いフサザクラ

 

フサザクラという植物は世界的には珍しい植物といえます。フサザクラのなかまであるフサザクラ科はアジアに固有で、フサザクラ属の1属だけでできています。フサザクラ属には2種が知られていて、そのうちの1種であるフサザクラが、本州、四国、九州に分布しています。秩父地域では特に珍しいものではありません。生育環境は、谷沿いの急な斜面などです。10mを超すこともある落葉高木で高さ10mを超すこともあります。今の時期は、ほかの木もほとんど葉をつけておらず、赤い少し変わった花が咲いているので注意していると気がつきます。フサザクラの花には、花びらである花被や、萼がありません。多数の赤い雄しべのやくが房状に下がっていることからフサザクラという和名になったといわれています。

 

フサザクラの花

花被や萼がなく雄しべが目立つフサザクラの花

 

花の時期以外は特に目立つ植物ではありませんし、花も特別目立つものではないですが、皆さんの近くに世界的に珍しい植物がひっそりと生育しています。明日からいよいよ新年度が始まりますが、小鹿野高校で学ぶ皆さんは、せっかくですから、まわりの豊かな自然にも気をとめて充実した学校生活を送ってもらいたいと思います。