校長Blog
2024年11月 スミレ再び
11月下旬になって朝晩の冷え込みが増しています。学校から見える山の木々も色付いています。小鹿野も本格的な冬を迎えます。11月は、霧の発生も多く、先日は、雨上がりで学校に着いたとき、霧が出ていました。校章のデザインに使われているイチョウの葉も黄色みが増しています。
11月27日に咲いていたコスミレ
11月の下旬に校地内を歩いていたら、コスミレの花を見つけました。皆さんはスミレのなかまは、春に咲くというイメージが強いかもしれませんが、2023年6月の校長ブログ「スミレの生存戦略」にも書きましたが、花弁がない閉鎖花は、春以降も長い期間見ることができます。そして、秋になると、春のように花弁がある開放花を付けることがあります。花弁がある開放花には、自花受粉ではなく他の花の花粉で受粉する機能があります。そのことによって遺伝的な多様性が受け継がれるのです。スミレ属の花は虫媒花で、ハチのなかまなどがポリネーター(花粉媒介者)のようです。同じときに開放花を付けている複数の種類が近くに生えていると、ポリネーターは、花の蜜が目当てで花を訪れます。そして花粉を体に付けて次の花に行きます。そのときポリネーターはスミレの種類はあまり気にしないと思いますので、結果として異なる種間で交雑し、雑種ができます。スミレ属には多くの雑種が記録されています。下の写真は、左からヒカゲスミレ、中央がスワキクバスミレとよばれるヒカゲスミレとヒゴスミレの雑種で、右がヒゴスミレです。ヒカゲスミレは、単葉で葉は切れ込みませんが、ヒゴスミレの切れ込む葉を受け継ぎ、スワキクバスミレは中間型になっています。
左の葉からヒカゲスミレ、スワキクバスミレ(雑種)、ヒゴスミレ
通常、別種の個体間の交雑でできた雑種の個体は、有性生殖による繁殖が正常ではないことが多く、雑種であることは、そのことからも推測できます。例えば、下の写真はスミレとヒゴスミレを交雑して種から育てた雑種の個体です。葉にはスワキクバスミレのように切れ込みがあります。花の色はヒゴスミレが白色で、スミレはいわゆるすみれ色ですが、両種の雑種は、スミレの花に似た色です。この雑種のスミレは毎年4月下旬によく花が咲きます。これを15年以上観察してますが、今まで一度も種子ができていません。
スミレとヒゴスミレの雑種スズキスミレ
しかし、植物の場合、交雑したあとに倍数化が起こることによって新しい種が形成される可能性があります。もしかすると皆さんが気が付かないところで新たな種が形成されているかもしれません。スミレはこのようにおもしろい植物です。県内にもスミレの雑種は生えています。いつか新しい種ができるかもしれません。そんなことを思いながら観察することは楽しいことです。